映画『デイアンドナイト』で山田孝之プロデューサーが涙した才能 清原果耶
2018.12.15
俳優の山田孝之が初めてプロデューサーを務めた映画『デイアンドナイト』。選考、オーディションした500人以上のなかから山田を「ヒロインの奈々そのもの」と直感させた女優が、清原果耶。「プロデューサーという立場を忘れて、泣いてしまった」と、その芝居を絶賛した。
「オーディションに集中していて、山田さんが泣いていたかどうかは、気付きませんでした。後からそれを聞いて、嬉しかったですけど(笑)」。奈々は、児童養護施設に暮らす少女。親の顔も知らずに育つが、その悲しみや孤独を表情に出さない。「すごく強い甲羅というか、そういうものをまとって生きてきた少女だと思いました」。
物語は、揺れる気持ちを押し殺してきた奈々と、父を自死で失った明石(阿部進之介)とが出会うことから始まる。明石の父は、正義を求めて行動したことで死に追いやられた。明石は善と悪のありように葛藤し、揺れる。この対照的なふたりがスクリーンに向かい合い、スリリングな芝居をぶつけ合う中に、この映画に流れるテーマ「二面性」が鮮やかに浮かび上がる。
「撮影中は奈々として生きることに徹していて、とにかく毎日体当たり。それを、児童養護施設のオーナーの北村さん(安藤政信)、明石さんが優しく包み込んでくれて、監督が編集でうまくまとめてくださって(笑)。完成してから『こう映ってたんだ』って」。
「何も覚えていない」ほど無我夢中の現場で、プロデューサー山田孝之の存在は大きなものだった、と振り返る。「山田さんの、作品に対する熱量を現場で感じることが多々ありました。細かいことで言えば『寒くない?』と声を掛けていただいたり、差し入れをしてくれたり。現場では役者にしかわからないこともあると思うんです。そこに寄り添ってくださったので、とてもお芝居がやりやすかったです」。
映画『デイアンドナイト』は、誰のうちにもある「二面性」について問いかける作品。仕事とオフ、二つの清原果耶の顔は?「女優として経験してもっともっと学んで成長していけたらいいと思うし、歌や舞台にも興味があるので、女優人生の中で、そういうものも経験できたら」。一方、休みの日には、「一人で家に引きこもりますね。最近はギターを弾いたり、神社巡りをしたり。実は、オーディションの前にも、実家の近所の神社にお祈りしたりしていました」。
スタイリスト:井阪 恵(dynamic)/ヘアメイク:面下 伸一(FACCIA)
清原果耶 Kaya Kiyohara Profile: 2002年大阪府出身。アミューズオーディションフェス2014グランプリ。モデルとして活躍しながら、NHK連続テレビ小説『あさが来た』、映画『ちはやふるー結びー』に出演。NHKドラマ『透明なゆりかご』(2018年7月放映)では主人公を演じた。
「何が正義で悪なのか、答えではなく考えるきっかけを投げかける作品」(山田孝之)
2018年10月に行われた完成報告会見で、企画者であり主演の阿部進之介は、「藤井監督の過去作品を見て才能に惚れ込んで、それを山田孝之に話して、3人で会ったのがきっかけ」。藤井監督は「脚本を作り始めたのは2013年。納得のいくものを、と演じながら書き直し続けました」。テーマについて山田は「何が正義なのか悪なのか、答えではなく『自分ならどうするか?』と考えるきっかけになれば」。その山田から声をかけられ「ぜひ応えたい、と出演を決めた」と安藤。ロケ地として選ばれたのは秋田県。「物語のモチーフである風車、廃校となった建物もイメージにぴったりだった」と藤井監督。裏方に徹した山田は「寒い中、地元の実行委員の皆さんに支えていただき、完成させることができた」と深い感謝の気持ちを述べた。
『デイアンドナイト』
●2019年1月19日(土)秋田県先行公開/1月26日(土)全国公開
明石幸次(阿部進之介)は父の死をきっかけに東京から実家に戻る。整備工場を営んでいた父は大手自動車メーカーの不正を内部告発したことで自死に追いやられた。明石は地元で児童養護施設「風車の家」を運営する北村健一(安藤政信)と知り合う。彼は明石を風車の家で料理を手伝ってくれるよう頼みながら、夜の裏稼業にも引き込む。昼と夜の暮らし、善悪の行方に揺れる明石は、「風車の家」に暮らす子供達の一人、奈々と心を通わせる。彼女には秘められた過去があった。主題歌は、野田洋次郎の作詞作曲、清原果耶が歌う。
出演:阿部進之介 安藤政信 清原果耶 田中哲司 ほか
企画・原案:阿部進之介
脚本:藤井道人 小寺和久 山田孝之
監督:藤井道人
プロデューサー:山田孝之 伊藤主悦 岩崎雅公
制作プロダクション: and pictures inc.
制作協力:プラスディー BABEL LABEL
配給:日活