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INTERVIEW

「信じられるもの」があることが、人生の幸せ

「大変な役だとは思いましたが、もう直感的に『やりたい』っていう気持ちが強かったです」

映画『徒花-ADABANA-』で水原希子が演じるのは、死が近づいている主人公・新次(井浦新)のケアを担う臨床心理士、まほろ。映画『あの子は貴族』(2021)やCMで見せるパワフルなオーラとは全く違う、強く抑制された演技が、この映画のこれまで観た事のない世界観を体現している。

役作りには、自ら綿密なリサーチを行った。

「臨床心理士の方々にコンタクトし、お会いしました。感じたのは、プロフェッショナルとしてテクニカルなことだけでなく、自分自身を保つ冷静さも必要な仕事だということ。時には、患者さんに寄り添いながらもドライに観察する距離感も求められる。それを、自分が演じるまほろの中に、どう共存させて表現するか、難しかったです」

病に冒され、「命の提供」を待つ新次は、罪悪感や過去の人生への疑問に苦しむ。まほろの内にも疑いがわき起こり、気持ちは揺れる。

「新次さんと接するシーンが、一番悩んだかもしれない。短い会話の中で表現をどう加減してゆくか。二人とも、演じていて不安だったと思います」

前例のないこの難役を、どう演じきったのか?

「もう、監督を信じるしかない」

 

 

題名の『徒花』は、咲いても実を結ばずに散る花のこと。名前すら与えられず「それ」と呼ばれ、患者の延命のために生育されるクローンを暗示してもいる。しかし、この映画では、儚い生を生きる「それ」が、新次に、まほろに、そして我々に、大切な気づきを与える存在として描かれてもいる。その気づきの一つが、「信じる」ことの強さだ。

「何か信じられるものがあるというのは、すごく幸せなことだと思います。熊野古道で滝行をしたことがあるのですが、その時、昔、母が歌ってくれていた子守唄がフラッシュバックしたんです。ずっと離れて暮らしていたこともあって不安に感じていた母からの愛情が、確信に変わった。信じることが、喜びに変わった瞬間でした」

『徒花-ADABANA-』が描く、極限の世界での「信じる」ことの幸福と希望を、映画で体感して欲しい。

Photo by Masatoshi Nagase

 

水原 希子 Kiko Mizuhara

Profile アメリカ生まれ、神戸育ち。16歳からモデルとして活躍。映画『ノルウェイの森』(2010)で女優デビュー。『あのこは貴族』(2021)で、高崎映画祭最優秀助演俳優賞。モデル、俳優、デザイナーとしてもマルチに活躍。

 


 

 

井浦新の無垢な表情がこの映画のトーンに合うと直感しました

生命操作というショッキングなテーマに挑んだ、甲斐さやか監督。「構想は、クローンが話題になった20年前から抱いていました。ガラス張りの部屋に、対照的な境遇の“同じ人間”が向かい合っている。その構図からいろんなことを浮かび上がらせられると思ったんです」

それは単純に善悪の対比や生命倫理への問いかけではない。「世界が猛烈なスピードで変化して、流されるまま、人は皆、生きることに不安を持っている。もし、別の生を生きる“もう一人の自分”がいるとしたら? “それ”と侮蔑的に呼ばれているクローンとは、一体誰のことなのか?問いを置く物語をつくりたかった」

人間の深層を映像美で伝えるスタイルは甲斐監督の真骨頂。今作ではそこに、患者とクローンの二役を演じた井浦新の佇まいの美しさが加わった。「井浦さんは、どこか不思議な、無垢な表情をされる時があって、この映画のトーンにすごく合うんじゃないかと、直感しました」

 

甲斐 さやか Sayaka Kai

Profile 東京都出身。女子美術大学在学中より映像作品を制作し始める。長編映画デビュー作『赤い雪 Red Snow』(19)でJAJFF(Los Angeles Japan Film Festival) 最優秀作品賞を受賞。最新作『徒花 -ADABANA-』は日仏合作。

 


 

Cast 

 

 

井浦新 Arata Iura

死が近づいている主人公・新次。映画界に欠かせない俳優の一人

三浦透子 Toko Miura

新次をインスパイアする「海の女」。 『ドライブ・マイ・カー』(21)での演技が絶賛される。

斉藤由貴 Yuki Saito

独特の存在感で新次の母を演じる。近年は俳優のほか、音楽や映像作品でも活躍。

永瀬正敏 Masatoshi Nagase

謎めいた印象の医師・相津。日本アカデミー賞を4度受賞した日本きっての俳優。

 


 

徒花-ADABANA-

ある先進医療施設。新次は「特殊な延命治療」を待つ身ながら、苦悩していた。臨床心理士のまほろは、医師・相津(永瀬正敏)のもと、彼の精神面を支えるが、自身も生命操作に疑いを募らせてゆく。

出演:井浦新、水原希子、三浦透子、斉藤由貴、永瀬正敏

脚本・監督:甲斐さやか

制作プロダクション:ROBOT DISSIDENZ

配給・宣伝:NAKACHIKA PICTURES

©2024「徒花-ADABANA-」製作委員会 /  DISSIDENZ

 

2024年 10月18日(金)テアトル新宿他全国順次公開

 


 

Exhibition 「徒花-ADABANA-」写真展

 

永瀬正敏が撮影した『徒花』の写真展が、10月に大垣書店 麻布台ヒルズ店で、11月にGallery PARC(開催場所は裏面参照)で開催予定。詳しくは『徒花』公式HPへ。

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