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INTERVIEW

歌舞伎の底に流れるのは「愛」 変化する時代とともに、 受け継がれてきたものを伝えたい 片岡仁左衛門

颯爽と見得を切る江戸歌舞伎のヒーロー・助六、滲む風情で観客のため息を絞る『恋飛脚大和往来』の忠兵衛。片岡仁左衛門は、江戸時代から歌舞伎に息づく江戸と上方(大阪、京都)、ふたつの文化を鮮やかに体現する名優。大阪に生まれ京都育ち。父の十三代目仁左衛門とともに、上方歌舞伎復興に尽力した。

「いろいろなお役がありますけど、大きく分けて江戸はカッコよく、スキッとしている。上方の芝居は、人間のもろさ、弱さというものを出しますね。カッコ悪いことを楽しむのも上方らしさ。現代でも、大阪の人は『これ、いくらだと思う?』と安いのを自慢するでしょう?東京と逆です(笑)」。

どんな役も「演じるのではなく、その役になって」務めてきた。「演技というのはふた通りあって、ひとつがお客様に“そう見える”ように、というもの。技術的に優れた方はそれをなさる。私は不器用ですから、その気持ちにならないとできないわけです。追い詰められた人物を演じる時は、もちろん精神的にも苦しい。楽屋に帰れば自然に気分転換しますけどね(笑)」。

歌舞伎という虚構に命を吹き込むのは、役者のリアルな心と、物語の中にある、いつの世も変わらぬ普遍的なテーマだ。

「江戸時代から現代までで、人の生活様式、心の持ち方がずいぶん変わってきています。主人のために息子を殺すような話は、今では考えられない。けれども、その底に流れているものは何かと言えば、愛なんですよ。家族を思う愛、主人を思う愛‥‥愛がテーマなんですよ、すべて」。

2018年の顔見世興行(京都・南座)では、息子の孝太郎、孫息子の千之助と三代で共演した。昭和、平成、そして令和へ。

50年以上第一線を走ってきた仁左衛門丈に、伝統を伝える思いを訊いた。

「役者の成長過程を楽しんでくださる演劇っていうのは、世界中を見ても、他にあんまりないんじゃないでしょうか。歌舞伎って、その時代時代で、変わってきているんです。今の歌舞伎と江戸時代の歌舞伎では随分違うし、お客様の環境も違います。伝えられてきたことを守りながら、それを今のお客様にわかっていだけるように変えてゆくことは大事だと思います。目新しさばかりでなく、やはり多くの先輩方が守ってこられたものを大事にしていって欲しいと、そう希望しています」。

ヘアメイク:佐藤健行(Happ’s.)

スタイリスト:DAN

[スーツ、ハンカチーフ / dunhill(お問い合わせ先 03-4335-1755)

シューズ / Paraboot(お問い合わせ先 03-5766-6688)]

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片岡仁左衛門Profile 1944年、大阪生まれ。13代目片岡仁左衛門の三男。1964年、父の旗揚げした仁左衛門歌舞伎で『女殺油地獄』の与兵衛を初役で演じ出世芸となる。テレビ、映画、舞台演出と幅広く活躍。1998年、15代目片岡仁左衛門襲名。1987年日本芸術院賞、ほか多数受賞。2015年重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定。2018年文化功労者に。

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Information 片岡仁左衛門の出演する舞台、映画

秀山祭九月大歌舞伎(東京・歌舞伎座)2019年9月1日~25日

第50回記念吉例顔見世(名古屋・御園座)2019年10月2日~26日

吉例顔見世興行(京都・南座)出演予定

シネマ歌舞伎『廓文章 吉田屋』(2020年1月3日より全国の映画館で公開)

仁左衛門・玉三郎の黄金コンビがスクリーンに登場!艶やかな男と女の恋模様を描く、上方歌舞伎の代表作。


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