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「お茶」を通して成長する一人の女性の物語 映画『日日是好日』

2018.1002

「お茶」と聞くと、作法が多くて堅苦しいものだと思ってしまう人も多いはず。エッセイスト森下典子の『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫刊)は、その「お茶」の作法の向こうに、大きな自由と楽しみがあることを描いた、目から鱗の人気エッセイ。それを映画化したのが、『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』だ。茶人の伝記はあっても、「お茶」の稽古をテーマにした映画はおそらく初めて。入門者には不思議なことだらけのお点前の手順、稽古中のハプニングなど、非日常の空間である茶室で起こる小さなドラマの数々。それを通してヒロイン典子が「お茶」からさまざまな気づきを得て、成長してゆくストーリーだ。

 

典子を演じるのは、山田洋次監督の『小さいおうち』でベルリン映画祭最優秀女優賞を受賞、いまや日本映画界を代表する黒木華。典子の真面目で理屈っぽい性格と正反対のキャラながら、一緒に茶道教室に通い、悩み多き時期を共にする同い年の従姉妹、美智子に多部未華子。そして、二人に「お茶」を教える武田先生に、樹木希林という最高のキャスティング。

 

樹木演じる武田先生は、「お茶はまず形から。後から心が入るものなの」と、言葉少なに極意を語り、あたかも「お茶」の心を体現するようなおおらかな存在感を見せている。大学生から社会人となり、仕事や私生活での悩みも多い典子だったが、茶室という空間では、その揺れる心をふと鎮めることができるようだった。そして武田先生は習い事の先生を超えて、典子の人生の師となってゆくが、典子役の黒木華にとっても、武田先生を演じた樹木希林は、憧れの大先輩だった。二人の共演の間合いには、導き、導かれるという「お茶の稽古」の世界にも似た、深い演技の交流が豊かな空気感となってスクリーンを満たしている。

 

もう一つの見どころが、みずみずしい映像と細やかな音響で再現された、典子が「お茶」から見つけた「五感で感じるよろこび」だ。夏の通り雨、冬に釜から立つ湯気、折々の花をかたどった美しいお菓子。流れる時間の中で、日々のかけがえのなさを知る典子とともに、観客も毎日を豊かにすごすヒントをもらえる、「お茶の幸せ実感映画」だ。

 

  • 樹木希林演じる武田先生の、なめらかなお点前。なんと「茶道経験はまったくなかった」というから驚き。

  • お作法を教わって「お茶ってなんだかヘン」と違和感を口にしていた典子と美智子。やがて、お作法の向こうにある自由に目覚めてゆく。

 

完成披露イベントは、「お茶」の祖、栄西禅師開山の京都・建仁寺にて献茶式

2018年7月31日、黒木華(典子役)、樹木希林(武田先生役)と、大森立嗣監督、原作者の森下典子の4人が着物姿で京都の建仁寺に勢揃いし、映画『日日是好日』完成披露イベントが行われた。中国から茶種を持ち帰った“茶祖”としても知られる、建仁寺の開山・栄西禅師。それに敬意を表し「お茶」をテーマにしたこの映画のスタッフが献茶式を執り行った。

 

続いての記者会見では、大森監督が「お経を聞いて心が洗われ、公開に向け身が引き締まる気がした」とコメント。この映画のために初めて「お茶」の稽古に挑んだ黒木は「順番を覚えるのが大変でした」。先生役の樹木は「先生の役だから、やらなくちゃ、やらなくちゃと、ずっと負担でした。先延ばしでいたら、プロデューサーが一緒にやりましょうと。えらい出来の悪い先生になりました」(笑)とは言うものの、森下からは「お点前が実際の武田先生に似ていることがあった」と樹木の演技を称賛する一幕も。

  • 左から、原作者の森下典子、黒木華、樹木希林、大森立嗣監督。大森監督は「着物を着るのは初めて」とか。

  • 建仁寺「方丈」での献茶式。和尚から受け取った茶碗を4人が栄西禅師の頂相のもとで回し、献茶。読経のなか、一同が 厳かに合掌。

  • 茶碗は4月20日の栄西禅師の誕生日に使用する天目。大正時代の振袖に旧宮家から拝領された帯を合わせた黒木の装いも艶やかだった。


映画『日日是好日』
「本当にやりたいこと」を見つけられずにいた二十歳の典子(黒木華)は、従姉妹の美智子(多部未華子)に誘われるまま、なんとなく茶道教室へ通い始めることに。所作や決まりごとの多さに戸惑いながらも、武田先生(樹木希林)の導きで、少しずつ「お茶」の面白さに目覚めてゆく。就職がうまくいかず打ちひしがれる時も、愛する人の裏切りにあって心折れた時も、大切な父が亡くなった時も、心穏やかに迎えてくれる武田先生と「お茶」は、心の拠り所となっていった。稽古で体感する小さな喜びを重ね、季節を、時間を、五感で感じて毎日を慈しみながら生きることを知った典子は、稽古場に掲げられた『日日是好日』の意味をかみしめるのだった。

 

脚本・監督:大森立嗣 
原作:森下典子『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』(新潮文庫刊) 
製作幹事:ハピネット ヨアケ 
配給:東京テアトル、ヨアケ 
©2018『日日是好日』製作委員会

 

公式HP:http://www.nichinichimovie.jp/ 
Twitter:@nichinichimovie 
Facebook:映画『日日是好日』

 

2018年10月6日(土)、7日(日)、8日(祝)3日間限定先行上映。
2018年10月13日(土)から全国公開(配給:東京テアトル、ヨアケ)


株式会社グランマーブルは、『日日是好日』製作委員会に参加しています。

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