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『湖の女たち』の撮影で見た、人生で一番美しい景色 松本 まりか

湖畔の介護施設で、入居者が死亡した。事故なのか、殺人事件なのか? 吉田修一のミステリーが原作の映画『湖の女たち』は、滋賀県の北西、琵琶湖をのぞむ高島市で2か月にわたってロケ撮影された。

「本当に何もなくて、湖だけがある。外界から閉ざされたような場所でした。そこで起きて、寝て。これまで私はテレビの仕事が多かったので、そんな場所で暮らしてじっくり役に取り組むということはなかったから、すごく集中できました」

事件も不可解だが、演じた介護士の佳代にもミステリアスな内面がある。佳代は、捜査にきた刑事・濱中(福士蒼汰)と、恋愛とは言えない奇妙な関係を結んで極限までせめぎ合う。一見、佳代は濱中の強引さに抵抗できず身を任せているように見えるのだが、突発的な行動で濱中を怯えさせる瞬間もある。揺れ続ける感情と逆転する力関係の行き着く先はどこなのか? 役で見せる 今までの松本まりかとはまったく違う顔に、片時も目が離せなくなる。

「非常に重いテーマだったし、とても難しかったです。佳代が一体、どういう女性なのかがわからない。自分と向き合い続けて、壊れそうになったこともありました」

役作りのために受けた介護実習で、人と人との関係について、気づきを得たという。「介護って、“助けてあげている”仕事に見えるじゃないですか? そうじゃなくて、逆なんです。委ねることは何もできないことじゃない。介護する私は、身体を委ねて介護されている方から感謝されることで、存在意義が認められる。そのおかげで、ここに立てている。それまで見えていたものと、逆転していた」

そのことは、映画のテーマに真っ直ぐつながる。

「この映画がもっている目線は、善や悪、正しいか間違いか、とか、そういう表面的な判断じゃなくて、もっともっと引いているというか。清濁あるのが人間、そんなことだと感じました」

そんな境地にたどりつくまで、大森立嗣監督にはすべてを肯定してもらった。

「監督は、ただ『感じてくれ』と。『まりかがそう思うんだったらそれは正解だ』と。「誰かを信じて委ねる」という監督の揺るぎない覚悟を感じました」

映画のもう一つの主役は、人間の欲望や葛藤をすべて浄化するような、湖の雄大な自然だ。映画を支えたスタッフと共にその美しい風景の中にいた撮影のひと時は、忘れられないものになった。

「夜明けの湖畔のシーンで、だんだん湖が色づき始めてゆく中に、映画のスタッフがシルエットとして浮かび上がって見えました。実はその時には、私はもう女優はできないと思ったくらい自信を失っていました。でも、こんな美しい風景を、もう1回見たいって思えた。あの瞬間は強烈に自分の中で残っていて、自分の女優人生の中で、一生持っていくんだろうなって思います」

 


 

Profile

東京都出身。2000年にデビュー以来、ドラマ、映画、舞台などで活躍。映画出演には『退屈な日々にさようならを』(2016)、『ぜんぶ、ボクのせい』(2022)、『夜、鳥たちが啼く』(2022)、『アイスクリームフィーバー』(2023)ほか。

 


 

『湖の女たち』

琵琶湖近くの介護施設で百歳の老人が不可解な死を遂げた。老人を延命させていた人工呼吸器の誤作動による事故か、それとも何者かによる殺人か。真相を追う刑事たちと介護士の女、そして過去の事件を探る記者の運命は、深い湖に沈んだ恐るべき記憶に呑まれていく。

©2023 映画「湖の女たち」製作委員会

主演:福士蒼汰、松本まりか

原作:吉田修一 『湖の女たち』(新潮文庫刊)

監督・脚本:大森立嗣

2024年5月17日(金)公開

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