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作曲家&ピアニスト・中野公揮、日本人として初めて、パリ・オペラ座のオープニングガラで演奏

2022.3.15

パリを拠点とする作曲家・ピアニストの中野公揮が、ダミアン・ジャレ振付のダンス作品『Brise-lames』で音楽を担当し、パリ・オペラ座のオープニングガラ公演で演奏した。これは日本人として初めてのこと。それ以上に、コンテンポラリーダンスと音楽のコラボレーションのネクストレベルを示した快挙でもあった。新アルバムの発表を控える中野公揮にインタビューした。

 

-振付家・ダミアン・ジャレによる『Brise-lames』は、ロックダウンのため当初の公演予定を延期。テレビ放映となるが、2021年9月オペラ座のオープニングガラ公演として再演された。美術と衣装を、世界的に知られるストリートアーティスト・JRが手がけたことも注目を集めたが、観客の心を掴んだのは9人のダンサーの波のような動きを共鳴し増幅させる、中野公揮の音楽だった。メイキングプロセスはどう行われたのか?


作品の構想の段階から、ダミアンが僕のスタジオに来てくれ、彼がノートに描いたスケッチを見ながらイメージを共有し、逆に僕からは、振り付けが始まる前に様々なテイストの音楽の断片を作ってはダミアンに送る、という作業を繰り返していました。振付が始まってからは、リハーサルの過程を共に経験し、深く感じ、純粋にそこから湧いてくる自分の音楽を踊りに重ね合わせていくような作業でした。オペラ座でのリハーサルが始まってからは、劇場に足を運んで、優雅に見える振り付けが実際にダンサーの身体にどのような負荷をかけるのか、またそこからどのような感情が立ち上がってくるのか?ということを観察し、アイディアを練っていきました。


-2019年の2月、1度目のロックダウンによって予定されていた公演は中止されたが、中野はロックダウンの直前から作曲を始め、新しいアルバム制作にとりかかった。不穏な日々の中、1年半ほとんどパリのスタジオにこもって完成させた『Oceanic Feeling』は、人類の根源的なビジョンを示唆するようだ。


アルバムのタイトル『Oceanic Feeling』(海洋感)は作家のロマン・ロランが精神分析医のジークムント・フロイトへの手紙の中で、世界や他者と一体となる感覚を表現するため用いた言葉です。作曲時には、母体の中で子宮に浮かび(羊水は海水の成分と非常に近いと言われています)、へその緒でまだ他者とつながっている曖昧な存在の状態を絶えずイメージしていました。僕自身、永遠性に憧れる気持ちを抱きながら、実際には生まれた瞬間から肉体、時間など、多くの有限性、境界によって規定されてこそ成り立つ存在であるという、自分の中に二つの事実のはざまで葛藤し、揺れる感覚を常に持っています。そのような無限に続く揺れを積極的に捉え、そこに立ち続けることのできる、想像しうる様々なシェイプのあり方を描きたいという思いで作った12曲です。

 

「Koki Nakanoの音楽を聴いて、この作品は素晴らしいものになると確信した」 
−オーレリー・デュポン(パリ・オペラ座芸術監督)

©Matthew Brookes 

「ダミアンからKoki Nakanoのことを聞いたときは、私は彼のことを知りませんでした。ですが、彼の音楽を聞いてとても美しいと思いこの作品は素晴らしいものになると確信しました。そしてその確信は間違っていなかったのです」。

 

Profile
1989年パリ・オペラ座入団。1998年エトワールに。2015年42歳でダンサーを引退。2016年バレエ芸術監督に就任。芸術文化勲章(2005年)、レジオンドヌール勲章(2015)叙勲。

 


 

『Brise-lames』(ブリーズラム:防波堤)
振付:ダミアン・ジャレ、音楽:中野公揮、舞台美術&衣装:JR 2021年9月、パリ・オペラ座公演
振付家・ダミアン・ジャレは2019年に彫刻家・名和晃平の招きで「REBORN ART FESTIVAL」(宮城県)で中野公揮とワークショップを行った。この時の、被災地の海を舞台にしたパフォーマンスが、『防波堤』のイメージとなっている。

 


 

『Glances』 choreograph & dance by Tess Voelker (ミュージックビデオより)

 

新アルバム『Oceanic Feeling』から、気鋭の振付家とコラボレートしたミュージックビデオ5本を公開

2022年5月13日にフランスのレーベルNø Førmat!から発売される、中野公揮の新アルバム『Oceanic Feeling』。「作曲時には常に身体の動きのイメージがあったので、5名の振付家とコラボレーションし、5本の動画を制作しました」(中野)。その中の1本、『Glances』(写真)は、NDT 1(ネザーランドダンスシアター)所属のテス・ボルカーの振付。テスは1997年生まれ。ダンサーとして著名な振付家の作品に数多く参加し、2021年、22歳でパリ・オペラ座に振付家として招かれ新作を発表している。

●『Oceanic Feeling』 https://idol.lnk.to/OceanicFeeling

 


 

Photo by Camille Pradon

 

中野 公揮 Koki Nakano

Profile
東京藝術大学の作曲科に学ぶ。2015年からパリに拠点を移しフランスのレーベルNø Førmat!と契約。2016年スティングなどとの仕事で知られるチェリスト、ヴァンサン・セガールとの作品『Lift』を、2020年に初のピアノ・ソロ・アルバム『Pre-Choreographed』をリリース。2021年にパリ・オペラ座でダミアン・ジャレ振付『Brise-lames』の音楽を手がける。2022年5月に2枚目となるピアノ・ソロ・アルバム『Oceanic Feeling』をリリース予定。また、発売に先駆け、特別ゲストを招いてのプライベートショウを、3/24パレドトーキョー(パリ)、4/8ベルリン、4/22ロンドンで上演予定。

 

中野公揮がパリ・オペラ座2021-2022オープニングガラで、日本人として初めて演奏したことを記念して、マーブルデニッシュ「フロマージュショコラ スペシャルエディション」(1944円・税込)を発売。グランマーブル直営店、オンラインショップにて販売中。

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