
京都から「モードで世界制覇」の夢 ファッションクリエイター、平野徳太郎
京都・祇園に50年続くブティック『AVEC TARO』 を構える平野徳太郎は、帽子デザイナーとして世界的な存在だ。「『背中は第二の乳房』と、女性の背中のセクシーさをテーマにして洋服をつくりはじめました。舞台衣装も好きで、雑誌にモード写真を発表したり、トータルにやっていたのですが、帽子が有名になりすぎたんです」(笑)。
息を呑むような色彩と造形美。平野のオブジェのような帽子は、芸術性と技術の高さが本場で賞賛され、展覧会がヨーロッパ各地で開かれ、指導も務めている。2001年にはヨーロッパ屈指の帽子生産地、仏コサッド市の名誉市民に選ばれた。
モードとの出会いは、70年代に訪れたパリ。エスプリを吸収しながら、それを超えたい、戦いたいという思いも抱いてきた。
「フランスに憧れて、オペラを見て思ったんです。どうやったらパリに負けない創造ができるのか?そこで、会場からつくって、1991年に『一坪オペラ』を上演したんです」。白川疏水沿いに建物を建て、佐藤信が演出を、女優の新井純、故・山口小夜子が出演した“オペラ”は、文字どおり一坪ほどの劇場で1日たった25人の観客に向けて、4日間限定で上演された。この贅沢な夢の劇場の跡は、現在、帽子デザイン研究所、専門学校「STUDIO HIRANO KYOTO JAPON」になり、教え子から国際的な帽子コンクールの上位入賞者を数多く輩出するなど、「モードで世界制覇」という平野の夢の基地になっている。
2017年、平野はロイヤルアスコット競馬に参加した。英国王家をはじめフォーマル姿のセレブが集う社交の場は「帽子の祭典」でもある。そこへ、平野は漆のシルクハット姿で乗り込んだ。螺鈿の技がきらめく前代未聞の帽子は驚きを持って迎えられた。「出るからには、スキャンダル性がないと(笑)。日本の工芸の技術は、モードの世界で戦う武器になると思います」。
祇園の美意識から始まった平野のモードは、世界を挑発する。
平野徳太郎 Profile 京都、祇園に生まれ育つ。1968年第一回コレクションを開催。1969年祇園に『AVEC TARO』オープン。雑誌などにモード作品発表。帽子デザイン研究所の研究生が国際的な賞を受賞し、指導力に高い評価を受ける。2001年にはコサッド市の名誉市民に選ばれる。
AVEC TARO 京都市東山区祇園北側273 Tel.075-561-3538
写真上:黄色い帽子で。奥様の紀子さんも受賞多数の帽子作家でコサッド市の名誉市民。下左・漆芸家・村田好謙が螺鈿細工を施したシルクハットはイギリスの帽子専門誌『The HAT magazine』に紹介された。

漆芸家・村田好謙が螺鈿細工を施したシルクハットはイギリスの帽子専門誌『The HAT magazine』に紹介された。

写真中・右 / エレガントな帽子は、「スパートリ」という技法でつくられる。

平野は海外の作家にこの技法の指導も務めている。

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